潮風香る海の近くのカフェ。ホットワインとともに楽しむ癒しの楽曲。このライブを録音しているのは、昨年小さなインターネットラジオ局を開局した友人だ。
新たに購入したのは小型の録音機ひとつ(機種にはこだわったと聞く)。今までなら、大掛かりな設備と機械、特別な知識や資金を要す、一般人には遠い世界のことが、この1台の録音機とチャレンジ精神だけでできるようになった、今の時代はなんとすばらしいのだろうと感嘆していた。
もう少し前なら、自費出版が身近な価格になったということでリタイアした人の夢を少し叶えた。いや、そんな話を持ち出すまでもなく、今や多くの人々が、ブログというツールを得て自分からどんどん情報を発信している。
情報発信が大資本の手から一素人の手に移りつつある。扱うメディアも、文字から静止画、音、そして動画へと拡大された。
昨年11月、あるインターネットテレビが開局された。パソコンでテレビ番組などの動画を見る環境を提供する、オンデマンド動画配信サイトだ。
今あふれている無料で流される映像とは、画質、時間、画面サイズ等の面でもまったく別物のクオリティを誇る。きちんとした課金システムを備えたこの新しい動画配信サービスを始めたのは、テレビ番組制作会社
オセロット(東京)だ。
テレビドラマ、映画・演劇、ドキュメンタリー、講演・公演、e-ラーニング、委託作品、自主配信のコーナーが用意されている(すべてのコーナーが充実するのはこれからの楽しみのようだ)。
テレビ番組に限らず、文化作品、芸術作品、内容のある公演やセミナーを、自宅のパソコンで楽しめるのはいい。
作品ごとに料金が明示してあって、1作品ずつ購入できる(視聴できる)仕組みはわかりやすく利用しやすい。
例えば、ご存知オードリー・ヘップバーン主演ローマの休日は500円
(税込)、渡瀬恒彦主演の世直し公務員・ザ公証人は420円
(税込)だ。蟹江敬三が渋くていい。見所が短くまとめられているので選ぶ材料になるし、試視聴もできる。決済はクレジットカード。
ディスクの空きを気にすることなく待たずにすぐに楽しめるストリーミング配信だ。
視聴者にとって便利なだけでなく、発信者側にとっても、限られた人にしか届けられなかった内容を、より多く広く伝える機会を得るのだ。
そして、視聴者はいつでも視聴者にとどまらない。発信者でもあるのだ。だれでもが手軽に動画を使った表現者・発信者になれるのだ。
いわゆる一般人が、プロと同じように、映像を通して自己を表現でき、世界に向けて発信できる「自費配信」コーナーの今後がとても興味深い。
そして、この流れは将来、商材をリスクなく扱えるドロップシッピングのように手軽に、自分の表現を売買できる展開になるのかもしれないと暴走して妄想してみる。
気になるのは、視聴可能環境がWindowsのみとなっていること。Macに対応する予定があるかどうかは明記がなかったがどうだろうか。
音楽配信が始まったころ、どこもMacには対応していなかった。今や、iPod(iPhoneを含む)が音楽を購入したり楽しんだりする端末のスタンダードとなっている。
もちろん動画視聴にも対応しているiPod、iPhoneでの利用を可能にしていくことを望むし、今後業界はその流れになっていくのではなかろうか。そのような光景を、一消費者(でありながら発信者になり得る)筆者えんぴつは、ワイングラスの色に重ねて映すのであった。
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